第21回講習会 参加者からの印象記

                                  JCHO横浜中央病院 伊藤 亮二

 

 今回、私は日本放射線公衆安全学会主催の第21回講習会「検査線量の把握とその最適化」についての講習会に参加しました。最近、新聞等でCT検査における被ばく線量が各施設間で数倍~十数倍の差があることが報じられ世間の関心を集めました。これを受けた形で診断参考レベル(DRL)が発表されたことは少し後手に回った感があります。しかし、放射線検査のDRLが発表されたことは日頃の検査が最適化されているのか精査できるようになり、技師にとっては被ばく低減に向けての大きな道標となることでしょう。

 講義を拝聴しての感想を述べたいと思います。近年、医療技術の進歩により、放射線技術も大きく変化しました。例えば、一般撮影のデジタル化は診療放射線技師に撮影時の条件設定の簡略化をもたらし、フィルム・スクリーン時代のシビアな撮影条件設定の必要がなくなり、ベテランも若手も同じ様な画像を得ることが出来るようになりました。その結果、全体的には線量の低下に繋がっているようにみえますが、個々には標準体型を下回る方にも標準体型と同様な条件で撮影しているなど、線量の増加に繋がっている危険性も感じます。また、CT検査については装置の性能が上がり(逐次近似法の導入等)被ばく線量は確実に低減されていると思われます。しかし、実際にはこれまで流通してきた日本診療放射線技師会の医療被曝ガイドライン2006の値よりも頭部などにおいては大きなDRL設定になってしまいました。これは、画質を追及するあまり、設定条件が高くなっていることの反映なのでしょうか。また、臨床でのCT検査の問題として取り敢えずCT検査をすれば何かわかるだろう的な判断で安易に行われている場合も見受けられ、一度の検査では少ない線量でも検査回数の増加によって、結果的に被ばく線量の増加に繋る恐れも考えられます。今後は欧米諸国の様に単純CTは撮影しないことや、目的に合わせた画質を検討することで、被ばく線量低減を考える必要があると感じました。また、今回は一般透視やポータブル撮影についてのDRLは検査の多様性や情報不足などから発表されませんでしたが、一日も早いDRLの発表が待たれます。 

最後に講習会では診断参考レベルの決定に関与した委員の方々からDRLの目的や決定に至る詳細な報告について、やさしく丁寧に講義をうけました。講師の先生方に心から感謝申し上げます。今後、我々診療放射線技師はDRLをきちんと理解し防護の最適化を推し進める使命があることを強く感じました。 

 

 

 

 

済生会呉病院 林 詠子

 

 平成27年6月7日に、医療被ばく研究情報ネットワーク:J-RIMEより、「最新の国内実態調査に基づく診断参考レベルの設定(DRLs)」が発表されましたが、ちょうど当院では、機能評価受審を前に、更新したシステムの線量評価(算定ソフトを用いて)を行っていたところでもあり、これまで日本放射線技師会が策定、提示されてきた「医療被ばくガイドライン2000」、「医療被曝ガイドライン2006」の被曝低減目標と、何が変わったのだろうか、これからは、何をポイントに医療被ばくの管理をしていけば良いのか知りたいと思い、第21回講習会に参加させていただきました。

 診断参考レベルとは、専門家団体により設定される、助言的、患者の線量または、放射線薬剤の摂取量に適用される値で、医療被ばくにおいては、もし常にこれを超えるならば、施設での検討が必要となる値(調査レベル)をさすそうです。(技師会誌7月号にも詳しく掲載されています。)

 今回、提示された「診断参考レベル」ですが、CTについては、調査対象の75%値(以前のガイドラインの体格は65㎏ですが、今回は55㎏が基準だそうです)、一般撮影に関しては、デジタル装置(CRとFPDを含む)の普及率は96%であったので、デジタル施設のみのデータをもとに75%線量が算出されたそうです。マンモグラフィに関しては、日本乳がん精度管理中央機構で認定を受けたシステムのデータをもとに、十分適正化が進んでいるデータであることから、95%値が採用されたそうです。IVRに関しては、必要であれば治療は続けざる負えない状況であるので、参考レベルの提示は難しく、皮膚線量を考慮した、透視線量率20m㏉/min(IVR基準点線量率)のみ提示されています。核医学に関しては、投与量のガイドラインが出ており、大きく外れるデータは見受けられなかったそうですが、75%タイル値を基準とされたそうです。

 提示された数値がどのような意味を持っているのか背景を理解したうえで、自施設での評価をしなければならないと思います。また、これらの数値は、国内の状況を大きくとらえて、算出された値ですので、使用しているシステムによって、適正線量はもう少し絞られてくると感じました。例えば、講師の方が見せてくださった資料では、一般撮影において、FPDシステムの入射表面線量(平均値)は、CRシステムの7~8割程度だったとのことでした。

 当院では、昨年3月にFilm/ScreenシステムからDR システム(GOSタイプFPD)に更新したのですが、感度の差から、線量は旧システムの7割ぐらいに抑えられるだろうと予測し、ホトタイマーやプリセット値を変更しました。診断参考レベルには収まっていますが、同様のシステムのデータとも比較してみなくてはいけないと感じました。

 今回は、「最新の国内実態調査に基づく診断参考レベルの設定(DRLs)」の公表のタイミングに合わせた講習会の開催で、タイムリーに情報提供をして頂き有難うございました。

 各施設での適正化への取り組みが、国内基準の適正化に繋がっていくのだと思います。

 当院でも1人1人が、適正な線量の設定と無駄な被曝の低減を意識して検査を行っていきたいと思います。 

 

 

  

 

玄々堂君津病院 古梶宏和

 

 平成27年6月14日(日)に第21回講習会「検査線量の把握とその最適化」に参加いたしました。今回の講習会は、ここ最近の新聞報道などで話題にあがっている診断参考レベル(DRL)についても多々触れられており、非常に興味深い内容でした。受講の背景として、当院は平成22年に医療被ばく低減施設に認定され、5年目の更新審査の受審を控えておりました。認定更新に向けた取り組みの1つとして、DRLと当院の被ばく線量とを対比検討しましたが、私はDRLについてあまり理解しておらず、正直なところ有耶無耶のままになっていました。こうした状況もあり、今回の講習会で不安や疑問に思っていることが解消出来ればと考え受講した次第です。

 講習会においては、初めに医療被ばくガイドラインの設定方法とその現状、最適化のための線量単位についての講義があり、次に実際にDRLに引用されたデータを調査した各モダリティ班の班長を講師として、数値の意味や決定方法、線量測定方法そして数値の線量単位などの幅広い内容での講義でした。講義、スライド、テキストは非常にわかりやすく、実測や推定を用いて自施設の線量の現状を把握し、そしてDRL値との比較により線量を検討することの意義を痛感しました。

 総合討論では積極的に参加者が質問し、活発な意見交換が行われました。学ぶ意欲が高い参加者に囲まれ、『しっかり勉強しなくては・・・』と自分自身への良い刺激になりました。

 今回の講習会を受講して感じたことの一つに、DRLに対応するためには医療被ばく低減施設認定を取得することが近道になるのではないかという思いがあります。認定取得に向けて、検査線量の把握と最適化が必要不可欠となります。幸いなことに当院は認定施設であることから、DRL値との比較検討が容易に行えました。ぜひ多くの施設においても検査線量の把握と最適化が進むことを望みます。

 次回も機会があれば講習会へ積極的に参加し、意識および知識の向上に努めていきたいと思っております。最後になりますが、世の中の動きに対しタイムリーな形でご講義いただいた講師の諸先生方に感謝いたします。

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