学術大会 参加者からの印象記
9月17日(土)に開催しました平成28年度日本放射線公衆安全学会学術大会の参加者より印象記が届きました。
平成28年度日本放射線公衆安全学会学術大会に参加して
東大和病院 石橋 理
平成28年9月17日に開催された、平成28年度日本放射線公衆安全学会学術大会「診断参考レベル(DRL)から医療被ばく相談に向けて」に参加いたしましたので感想を記します。
学術大会のプログラムを簡単にまとめると、まず各施設が診断参考レベルに対してどの位置にいるのかを把握し、その結果から医療被曝を最適化するために活動をするという、診断参考レベルの意味合いについての発表がありました。さらに、このようなベースに立った上で患者からの被曝に対する問いかけに対し診療放射線技師はどう答えていくべきなのかといった、臨床現場で診療放射線技師に求められている放射線の知識とその活かし方、患者への放射線被曝についての伝え方などのお話がありました。
日々の臨床現場では「CTは被曝が多いと聞きましたが、大丈夫でしょうか?」などといった患者・家族から被曝について聞かれることがあると思います。この問いに対し、私たちはどう答えていくべきなのでしょうか。IT技術の発展に伴う一般の方々の被曝への知識量の増加(しかも、必ずしも正しいといえない)もあり、ニュースなどに取り上げられれば、それに比例して問い合わせも増える。こういった状況の中で私たち診療放射線技師はどのような考え方で、どのように返答すればよいのか、そのためのヒントを得られるような企画内容でした。
「患者はどのような答えを求めているのであろうか?」その答えとして質問の内容について正確な回答をするだけでいいのであろうか?また正確な回答自体が最適な回答となり得ているのであろうか?実は患者が真に求めている回答は「不安の解消や共感」であり、いかに「患者の不安」に寄り添い、これを取り除くのかが重要であるという点が印象的でした。まず根本的な事柄として、検査の利益が被曝の不利益を上回ると医師が判断したという正当化された検査であることの説明を行うことが必要であり、その基本的な考えをおさえた上で、不安の解消に向けて何をどう説明に付け加えていくのか。実は具体的な数値で話をすることよりも、様々なものに置き換えて話をすることなど、“曖昧な表現”(決して嘘や適当ではない)が時には有効であること。伝え方として比喩などを用いることや、プリントやパネルなどを作成し、これを活用することなどの実例が紹介されました。
被曝についての説明は、撮影方法などとは異なり明確な取り決めがなく、施設内でも個人の裁量やスキルに頼って対応しているのが現状であり、知識についてもまだまだ個人差の大きい事が現状です。このような私自身の気づきもあり、この点を改善したいと考えていたところ、本企画に参加したことで具体的な案がたくさん見えてきました。携帯できるチャートの作成や質問者の年齢等に応じたわかりやすいパネル等の資料作成などを積極的に取り入れ、だれが質問に応じても一定レベル以上の質の高い説明が行えるような環境を整えていきたいと思います。
最後に、今回ご講義いただいた先生方、ならびに関係者の皆様、この場をお借りして感謝を申し上げます。