平成29年度日本放射線公衆安全学会学術大会印象記
「平成29年度日本放射線公衆安全学会学術大会に参加して」
熊本整形外科病院 岩村 勇起
平成29年9月23日に開催された、第15回日本放射線公衆安全学会学術大会に参加しました。今回は『放射線管理と医療被ばく低減に対する取り組み』をテーマに、医療被ばくの最適化や医療被ばく低減に向けた活動の状況を、神奈川県放射線技師会、山梨県放射線技師会、北海道放射線技師会、労災病院機構技師会の方々から発表していただきました。
一般撮影の線量調査のアンケート実施について、医療被ばくの最適化を行うためには撮影線量の把握が重要になりますが、アンケートに答えることで自施設の撮影線量の把握と調査施設との比較が行えるのは、撮影条件の見直しのきっかけになると思いました。また、アンケートに未回答であった施設にもアンケート結果を送付することで改めて評価の依頼があったと報告もあり、医療被ばくに対する関心を高めるには効果的であると思いました。
続いて、放射線科医や診療放射線技師が在籍していない施設の最適化についての報告がありましたが、装置の定期点検などのメンテナンスが行われておらず、撮影条件も導入当初から変わっていない施設もあるなど、正直かなりの衝撃を受けました。しかしながらこのことは放射線管理だけではなく、放射線機器管理の重要性を改めて認識することにも繋がりました。診療放射線技師の在籍していない施設からは、医療被ばくの最適化だけでなく撮影方法などにも専門的なアドバイスが求められているとのことでしたので、本学会や技師会などの活動にも適しているのではないかと感じました。非常に興味深い話題でした。
被ばく線量測定についてはいくつかの算出ソフトが開発され、計算により簡単に求めることができるようになりましたが、線量計を用いて実際に測定することも重要です。ただし、実測するとなると道具の準備や詳しい方法がわからないなど簡単ではないので、被ばく線量測定セミナーの開催は非常にありがたいと思います。現在も日本診療放射線技師会主催ではセミナーが行われていますが、開催が東京や大阪などの都市部に限定されていますので、地域の活動として線量測定セミナーを定期的に行われているという今回の報告は遠方に住んでいる者としては多くの地域に広まってほしいと思いました。
診断参考レベル(DRLs2015)が発表され、医療被ばくの評価と最適化が図られるようになりましたが、今回、各地域の活動報告を受けて、様々な効果と課題の情報を得ることができました。熊本県放射線技師会でも放射線管理委員会を立ち上げて活動しておりますが、今後の活動の参考にさせていただくとともに、いずれ機会がありましたら本学会で活動成果の報告ができれば幸いです。
最後に、今回ご講義いただいた先生方、ならびに関係者の皆様、この場をお借りして感謝を申し上げます。