年頭挨拶
日本放射線公衆安全学会の真価が問われる時
会長 諸澄 邦彦(埼玉県立がんセンター)
平成24年の新春を迎え、謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
本会は、The Japanese Society of Radiation Public Safetyと称するように、放射線による公衆への危害を防止するための調査研究、およびその技術開発と成果の普及を目的に設立されました。
その目的を達成するために「医療被ばく説明マニュアル-患者と家族に理解していただくために-」「医療被ばく-患者さんの不安にどう答えますか?-」(ピラールプレス)の他、「医療従事者のための 医療被ばくハンドブック」「イラストで見る 放射線って大丈夫?」(文光堂)の書籍を刊行してまいりました。
医療被ばくは患者さんが受ける便益(benefit)を目的として、人体に故意に放射線を照射する(risk)という 放射線利用の特殊な分野です。そのため、医療被ばくを適正に管理するための放射線管理と放射線防護体系の確立が必要なことはいうまでもありません。
ところが、平成23年3月11日の福島第一原子力発電所事故以降、放射線、放射能、放射性物質などの用語がテレビで放映され、新聞に掲載されない日はありません。また平成23年12月22日に、薬事・食品衛生審議会で食品1kg当たりの放射性セシウムの新たな規制値として、一般食品100ベクレル、飲料水10ベクレル、牛乳・乳児用食品50ベクレルの数値が了承されました。
新規制値は、一般国民が年間に食品から摂取する許容線量を1ミリシーベルトと定め、標準的な食品の食べ方から試算されたものです。現代の情報化社会では、インターネット検索を利用すれば、被ばく線量やその放射線影響についての情報が入手可能になります。なかには、種々雑多な情報を集め、かえって不安に陥っている国民の方もいます。
今年度は、本学会が従来より進めてきた医療被ばく低減に向けた活動だけでなく、ホットスポットに代表される外部被ばく、食品に含まれる放射性物質を摂取することによる内部被ばくを含めて、国民の不安にどう答えていくかの活動を考えております。
本学会活動の柱である医療被ばく低減活動に加え、放射線、放射能、放射性物質に不安を抱く国民の視点で、学会設立時に掲げた基本理念を実践するため、会員の皆様に引き続きのご支援をお願いいたします。