理事就任挨拶
4月1日号から平成25・26年度新役員の就任挨拶を掲載しています。今回は佐藤寛之・
清堂・理事と今回新たに理事に就任した藤原理事です。次号は相模・松倉監事の予定です。
理事 佐藤寛之(聖マリアンナ医科大学病院)
現在、国民の放射線に対する不安は高まっています。この状況は医療の現場においても少なからず影響を与えています。診療放射線技師には、医療被ばくを含む検査説明の実施や検査線量最適化の実行が必要とされており、診療放射線技師に求められている知識や技術等に関する講習会を企画していきたいと考えております。 また、当会に寄せられる放射線被ばくに関する質問や相談についても、会員の方と情報共有ができるような体制を構築するよう提案していきます。
理事 清堂峰明(広島県立安芸津病院)
来月(7月)21日に日本放射線公衆安全学会(JRPS)10周年記念講演会を控えています。私が,この10年間でJRPSの理事として携わったのは8年間ですが,いろいろなことが起こり,変わったというのが実感です。そして「十年一昔」という四文字熟語を思い浮かべます。10年前を昔のように感じられるのは歳のせいかも知れませんが,世の中が大きく変わったことも事実だと思います。10年前を振り返ると,夜な夜な重い15インチノートPCを前にキーボードを打っていたような記憶があります。当時はすでに無線LANが普及していたかどうかといったところでしょうか。今では当たり前で,外出先でもPC,スマホで情報のやり取りが可能です。クラウドで記憶媒体を持ち歩くこともなく,情報がひっきりなしに入ってきて「ごめん,今 外出しているから」といった逃げ道も閉ざされた道になったように思います。このように情報技術のインフラ整備が進み,私の一番の生活の変化は,辞書,参考書等の紙媒体で物事を調べることがめっきり少なくなったということでしょうか。老眼のせいでペーパーは見づらいということもありますが,ネット情報の発展がもたらした情報化社会は,世の中の急速な変遷の一つでしょう。ネット情報でよく使うものの中に,数学,物理,化学といった学生時代に習った基礎教科があり,この解説には大変お世話になっています。また他にも○△の理論や言葉などあらゆる情報が容易に入手できます。これらの情報は,実に様々な説明がされていることに気づくのは私だけではないと思います。放射線に関する情報も実に様々で,「放射線はどんなに少ない被ばくでも危険だ!」「診断レベルの放射線被ばくは直ちに人体へ影響をおよぼすことはない」「診断レベルの被ばくは安全です」等,専門家の論説もそれぞれです。その上,放射線の量を示す単位もまちまちで,いったい何の値だろう?と首をかしげたくなる記述もあります。放射線の基礎知識を持たない人にとっては難解なネット検索情報だと想像します。この人たちが,多くの放射線情報を読み「納得」「理解」「安心」を見つけることができるのだろうか,安心して放射線診療を受けることができるのだろうかなどと考えます。これについて,JRPSもこれまで重要な課題として取組んできました。いろいろな情報から,唯一,共通していることがありました。それは,放射線利用を受容する考え方はいろいろあるが「このままで良い」とは言っていないことでしょうか。何らかの措置が必要だという意見では一致しているようです。ALARAの理念に従い,正当化,最適化,線量限度の基本を達成しなければ放射線を使うべきではないということだと思います。医療放射線利用も「医療」という特殊性のため,放射線防護の分野では改善する余地があることが指摘されています。医療放射線を取扱う診療放射線技師は,まず患者からの信頼を得なければなりませし,放射線をうまく使わなくてはいけません。放射線診療の品質管理,品質保証を定着させ,診療放射線技師の職務を社会へ伝え信頼を高めていくことが重要です。医療職としてチーム医療を推進し,診療放射線技師の責務と方向を定める岐路に立つ局面を迎えているように思います。これからの診療放射線技師が進む道を見据えて,10年後を想像しながら,地道な活動ですが日本公衆安全学会をとおして,会員の皆さんと今以上に質の高い放射線診療を築くことができれば幸いに思います。
理事 藤原理吉(市立横手病院)
市民は我々を放射線の専門家と呼びます。私自身は放射線測定や放射線による健康影響などの専門家ではないので専門家と呼ばれることに戸惑いを感じていました。しかし、市民は専門家という認識を持っています。ところで、診療放射線技師は放射線に関する質問に容易に回答することが出来ます。それは、なんだかわからない放射線というものを理解して頂けるよう手助けできる立場にあるということです。手助けできると思えてから専門家と呼ばれることにあまり抵抗が無くなりました。
日本放射線公衆安全学会が行う医療被ばくの低減活動、放射線検査に対する不安を除くための活動、被ばく相談によって不安を解消していく活動などを通じて、皆様と一緒に放射線による公衆への危害を防止して行きたいと思います。また、個人的な目標として、日本診療放射線技師会が勧めている医療被ばく低減施設の認定数を任期中せめて300施設に達するよう頑張りたいと思っています。