平成30年度 日本放射線公衆安全学会学術大会開催される

去る9月21日(金)10:30から山口県下関市にある海峡メッセ10階国際会議場において日本放射線公衆安全学会学術大会が開催されました。2015年に「医療被ばく研究情報ネットワーク」(J-RIME)より日本版診断参考レベルがリリースされて以来、2015年の京都、2016年の岐阜の学術大会では、いずれも診断参考レベルの認識を広げ、どのように活用していくかについて考える企画でした。また、昨年は「実践組織に学ぶ医療被ばく低減に対する取り組み」をテーマに4名のシンポジストにご登壇いただき、組織的に医療被ばくの最適化の活動を実践している団体の活動について報告を受け、討論を行いました。

今年は「公衆安全の立場から医療被ばくを考える」をテーマに、3名のシンポジストに講義を担当いただき、その後、討論を行いました。

第1席の「医療法省令改正に向けた線量記録の動向について」は、本会の笹沼副会長が担当しました。医療法で新たに規定された「医療放射線に係る安全管理」の中で、医療放射線の安全管理に係る体制や医療被ばくの線量管理の対象となるモダリティに関する説明がありました。

第2席の「医療被ばく線量把握と患者説明について」では、本会の佐藤理事が担当しました。被ばく相談の実例を交え、患者に説明する際に必要となる組織・臓器線量の実測方法とソフトによる推計方法について説明がありました。線量推計ソフトは便利である反面、操作卓等の出力表示と実出力が異なっていては意味がないため、精度管理がとても大切とのことでした。

第3席の「医療被ばく低減施設について」では、本会の佐々木理事が担当しました。医療被ばく低減施設認定の取得を進めるにあたり、まずは自己評価調査表に目を通すことが必要とのことです。また、放射線の管理、放射線機器の管理、マニュアル整備、放射線啓蒙活動といった観点から、それぞれの要点を絞った講義内容でした。放射線の管理では、遡って、ある患者の一定期間の被ばく線量を算出し、その影響を評価できるかが重要となります。それが出来るよう、モダリティごとでRIS上に必要事項の記録を行う必要があります。放射線機器の管理では、日常点検簿の項目で始業・終業点検の他に使用中点検を入れると、日中の故障や修理についても漏れなく記載することができます。マニュアル整備では、検査、教育、安全管理、機器管理といったマニュアルを1冊にまとめ、改訂履歴をきちんと残しておくことが重要とのことでした。さらに、マニュアルを改訂した場合には変更点や改善事項をスタッフに伝達し、伝達したことを確認することが必要となります。

 

以上3名の講義を踏まえ、総合討論に移りました。総合討論では、多数のご意見や質問をいただきました。その中から抜粋して記載します。

 

Q)線量推計ソフトの適応モダリティについて教えてください。

A)PCXMC、EPDは一般撮影、ImPACT、WAZA-ARIv2はCTです。

 

Q)施設認定取得を取得したいと考えている施設は多いかと思いますが、取得にあたり、一歩目を踏み出すために何が必要だと思いますか?

A)情熱ではないでしょうか。また、上司の理解があることも重要だと考えます。所属長の方にはぜひ、取得する方針を打ち出してほしいと思います。

 

Q)医療被ばく低減施設認定を取得するにあたり、何か目に見えるメリットがあれば、取得に向けて動き出す施設も多いと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

A)現在、JARTでは診療報酬に組み込めるように動いています。

 

今後も本会では、医療被ばく低減施設認定に関する講習会等を通じて、少しでも多くの施設が取得できるよう力添えをしていければと考えております。

最後となりますが、学会初日の平日にもかかわらず、本セッションには100名を超える参加者がありました。ご参加いただいた皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

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