理事就任挨拶

 役員選挙が終了し本年4月より新執行部の理事より連載企画で自己紹介を兼ねた挨拶を掲載してまいりましたが、今回で最後となりました。今回は監事として本会の運営にご指導をいただいております相模監事・松倉監事の2先生方より挨拶をいただきました。

 

・監事 相模 司

 

 2011年の福島第一原発の事故を契機に、国民は自然放射線、医療放射線、原発による放射能の外部被ばくや内部被ばくについて過敏になり、誰に相談することも出来ない混沌とした大きな不安と疑問を持って毎日過ごしているのが実情です。

 このような状況の中で、日本放射線公衆安全学会の諸澄邦彦学会長が中心となって出版された『解らないことだらけの放射線被ばく-医療被ばくの専門家である診療放射線技師が答える-』は、サブタイトルのネーミングがすばらしいだけではなく、その内容も簡便でわかり易く、今の時節に適時、適切な書籍の一つと思いました。ぜひとも国民の皆様方に、いえ同僚である専門家の皆様にも読んで頂きたいと思いました。

 一方、新聞等のメディアの放射線事故・被ばくのとらえ方や発表の仕方は、医療被ばくのうちで特に線量の多いと思われるCTの被曝線量であるGy単位を全身被ばくしたらという仮定でSv単位に変換した量と、事故被ばくの全身被ばくである実効線量Sv単位との比較で説明、発表している場面も見受けられます。

また、放射科医でさえも同様に国民に、災害被ばくと特定部位のCT検査の被ばく線量をわざわざ実効線量に換算して比較説明しているケースも見受けられます。

 これらの比較で、国民個々の健康被害を説明することは、ナンセンスを通り越して、国民の正しい知識を得ることへの害になるばかりでなく益々混乱に陥れることになりかねません。この原発事故以来、いったん間違った報道や専門家の発言を修正するにつけ、未だに苦労をしている現状がこのことを物語っております。

 先ほど害になると申しました訳は、皆様もご承知のように、放射線診断や放射線治療の大多数は局所被ばくであり、患者個人の正確な線量評価、健康リスクを考慮する場合は、被ばくを受ける臓器の吸収線量Gyで評価するのが適切であろうというのが国際的な考え方だからです。

 これらの事柄も含めた放射線に対する安全の考え方、特に医療被ばくの安全についての実践を専門家として、本学会員や診療放射線技師のレクチャー、研究の一助、実践できるような環境づくりに役員と努力をいたします。また、本学会から国民に対する放射線についての正しい知識の習得、助言、提言がスムーズに出来ますよう、本会長はじめ役員おお手伝いを致したいと思っております。

 

 

参考:『解らないことだらけの放射線被ばく-医療被ばくの専門家である診療放射線技師が答える-』 2013年3月出版

 

医療科学社 ホームページ

http://www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/434/index03-434.html

 

 

 

・監事 松倉昭芳(五福脳神経外科富山サイバーナイフセンター)

 

日本放射線公衆安全学会の監事就任は、今期で3期6年となりましたが、学会創立10周年の半分を監事として、迎えることで大変光栄に思います。

ところで、本学会の果たす役割は、診療放射線技師として重要な存在と考えます。医療放射線の管理と国民の医療被ばくの低減に向けての取組み、特に医療被ばく低減施設の認定制度は、日本診療放射線技師会との連携は当然と考えます。10年を経過した今日、認定施設が少しずつではありますが増加しています。施設認定に至る講習会の開催も本学会での成果と思います。

また、「放射線量最適化のための医療被ばくガイドライン-放射線診療における線量低減目標値とその実践―」の出版について「医療被ばくガイドライの改定」をはじめとするその他の研究班での活躍の大いなる成果と考えます。私と本学会との係りは、富山県放射線技師会の役員時に医療被ばく低減施設認定制度が発足し、富山県放射線技師会で認定施設として、取組施設への対応を考えての法人としての参加でした。しかし、国民の医療被ばく低減に向けての取組み以前の問題点も分かってきました。医療被ばく線量測定法の確立・測定法の基準策定といった基礎的なことを学ぶ必要性も痛感いたしました。

また、2011年3月11日の東日本大震災の発生に伴う、福島第一原子力発電所事故での放射線災害への活動、公衆被ばくへの対応が迫られました。風評被害も含め、未だにその影響が払拭されていないのが現状です。さらに、核医学における放射性同位元素過剰投与事故等の問題も国民の信頼を失墜させました。このような情勢からも医療被ばく・公衆被ばくを対象として安心・安全を提供できることが我々診療放射線技を含め放射線利用を行う全ての者に求められています。

現在は、放射線治療の仕事に従事しており、現役としては医療現場を離れていましたが、日本放射線公衆安全学会では、放射線公衆安全学の探求を主テーマに更なる発展を望みます。また、新たな会員の確保と後継者の要請も含めて要望したいと思います。

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