第20回講習会 参加者からの印象記

2月8日に開催された第20回講習会の参加者から印象記が届きましたのでご紹介します。

 

 

20回講習会『モンテカルロ法を使用したポータブル撮影時の散乱線の推定と

ポータブルならびに外科用イメージの利用における放射線安全管理』を受講して

 

越谷市立病院 矢部 智

 

  東京タワーも霞むどんよりした天候となってしまった28日(日)に日本診療放射線技師会講義室にて第20回講習会が行われた。以前から当院でもポータブル撮影については、技師による対応にばらつきがあることに問題を感じていたことに加え、院内スタッフにおいても過剰な反応を示す者もいることから、常々何かしらの指針と啓蒙が必要と感じていた。今回は、アンケートに基づき現状を踏まえた検討に、かつ実測が困難な空間線量を撮影現場の状況に応じて把握できるシミュレーションソフトの実習と大変興味深い内容であったため参加させていただいた。

 はじめに佐藤先生によるモンテカルロ法を用いた散乱線推定の講義では、撮影する部屋の環境条件や線源定義、さらには遮蔽物を加味した3次元の空間線量をカラーでスカラー量の分布を表示ができる素晴らしいソフトの説明があり、さらに受講生全員にソフトを配布していただいた。実習では、各自持ち込んだPCにソフトをインストールして実際にシミュレーションを体験した。今回は、与えられた条件を入力し一連の流れを体験したに過ぎなかったため、是非ともこのソフトの実習を別企画でじっくりと行っていただきたいと思った。

 ポータブルのアンケート調査の報告では、一般撮影に占めるポータブル撮影率は15%を超えており放射線検査の一つとして一般化されているという結果が報告された。また、2mルールが一般的に浸透しているが、ポータブル撮影においてもAP方向以外の撮影も増加傾向にあることや2mの距離が確保できない状況下で同一医療機関内においても放射線防護の方法が異なる状況があり、今後の技師としての対応が課題として挙げられた。

 放射線管理区域に立ち入る一時作業者の安全管理に関するアンケート調査の報告では、一時作業者が医師の手技への立ち合いを理由に管理区域に立ち入る医療機関が75%を超える状況の中で、約3分の2の医療機関が一時作業者の立ち入る時間や線量の記録を残していないという報告であった。これらの現状から放射線安全の確保を図るべくガイドライン(案)が紹介された。

ガイドライン策定については、アンケートから現状を把握したうえで放射線防護関連の法令を背景に技師が先頭に立って放射線管理を行うということに高いエビデンスで応えられるよう解説があった。

ガイドラインに基づく実践と現状について2施設からの報告のあと総合討論では、高線量を必要とする撮影条件下でも2mルールで良いのかとの質問や複数の施設に出入りする一時作業者の線量管理についての問題点など活発な討論が行われた。

今回の講習会に参加して放射線防護管理の重要性を再認識し、活動の必要性を強く感じた。提案されたガイドラインが一日も早く正式に公開されることを切に望むとともに今後の日本放射線公衆安全学会の更なる発展を祈念する。

 

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