理事就任挨拶

 4月より平成25・26年度新役員の就任挨拶を掲載しています。今回は渡邉・笹沼両副会長です。次回は笹川理事・山森理事の予定です。

 

 

副会長 渡邉 浩(横浜労災病院)

 

 平成23年3月11日の福島第一原発事故によって大量の放射性物質が飛散し、国民は放射線被ばくの恐怖を新たにした。日本放射線公衆安全学会は設立以来、(公社)日本診療放射線技師会(以下、技師会)とともに、医療被ばく問題の解決に向けて活動してきた。その間、私は当学会の学術担当役員として、また、技師会からの委託研究である「医療被ばく低減施設認定システムの策定」、「医療被ばく線量測定法の確立」の主任研究者を務めた。現在、医療被ばくへの世界的な関心は高く、CTによる過剰被ばく事故を起こした米国ではカリフォルニアなど一部の州ではCT線量の報告が義務付けられた。また、国際原子力機関(IAEA)はSmart Card構想を提案している。このような状況から、本邦でも医療被ばく情報研究ネットワーク(J-RIME)が発足しAll Japanとしての活動がスタートしている。しかし、このような状況にありながら放射線診療の現場では依然として患者線量を把握できていない病院が多く、診療放射線技師が医療被ばくの評価、最適化のために貢献できるのかどうかが問われている。したがって、本学会ならびに診療放射線技師にとって医療被ばくの最適化のためにここ数年が重要な時期にあると考えている。そのため、今後も日本放射線公衆安全学会の役員として、当学会員や多くの診療放射線技師のため、引いては国民の安全確保のために貢献したいと考えている。

 

 

副会長 笹沼和智(日本医科大学多摩永山病院)

 

医療放射線の専門家として

           

 平成23年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震による地震と津波により福島第一原子力発電所事故が発生し、10万人を超える被災者が屋内退避や警戒区域外への避難を余儀なくされた。その後、マスメディアから集中豪雨のように降り注ぐ放射線関連情報の洪水に日本中が飲み込まれたことは記憶に新しい。情報の大洪水の中で、特に放射線の専門家の「放射線はどんなに少なくとも害がある!」などの極度に放射線不安をあおる言動が、日本中を放射線不安に陥れた。専門家は客観的リスクと主観的リスクに大きな違いがあることを知らず、専門用語を平易に解説すれば、誰でもが簡単に理解してくれるはずと誤解していた。一般にリスク認知は対象が未知なもの、目に見えないもの、自分で統制することが難しいもの、メリットが不明なもの、子供に影響を与える可能性のあるもの、晩発効果があるものなどを過度に危険視する傾向があるが、放射線はこれら全てのリスク特性に該当する。放射線の専門家は市民の認識構造を理解してリスクコミュニケーションに取り組む必要があった。

我々診療放射線技師は、日常業務で放射線を扱い検査や治療を行う医療における放射線の専門家であり、放射線診療における医療の質と安全の大きな部分を担っている。しかし、その医療放射線の専門家が3.11以降、格段に増えた医療被ばくへの不安に適切に対処できたか、自分が行っている検査の線量を把握していたか、モダリティ別に表示の異なる線量の意味を理解していたか、疑問が残る。我々は医療放射線の専門家であり、社会において職務上の責任を果たす義務がある。日本放射線公衆安全学会の活動を通して、医療放射線被ばく管理と認識構造を理解したリスクコミュニケーションを普及する活動を行いたいと考えている。

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