NPO法人放射線安全フォーラム主催 市民公開講座 参加印象記

NPO法人放射線安全フォーラム主催 市民公開講座「原発事故から学ぶ,放射線とリスクの考え方」参加印象記

 

                                                                                                                              編集担当理事:清堂峰明

 

 7月20日(土)標記の市民公開講座がお茶の水大学で開催され,参加する機会があったので報告します。会場は100人程度が入れる講義室で,表題にもあるように市民公開講座ということで市民の方もこられているようでしたが,圧倒的に放射線に関する専門職,または,それに関連する行政,教育関係者が多い印象でした。

 さて,内容ですが,演題は3題が用意され,一題目は「リスクとは何か,リスクを考える上でのポイント,リスク管理にかかわる人が備えるべき資質」について大阪大学コミュニケーションデザインセンター 神里特任准教授からの講演でした。近代化とは,回避不能な危険な事象を意味する「Danger」を「リスク」に変換していくことであり,人の責任を伴う将来にわたってよからぬ事象を「リスク」と近代社会は表現していると解説されました。神里准教授は,科学者でありながら,リスクコミュニケーションを専門とされ,サイエンス・アセスメントについて研究をされている関係で,放射線リスクコミュニケーションのあり方の基本部分の講義をいただきました。

 2題目は,放医研 神田玲子先生で,放射線影響とリスク評価,考え方について,科学的な見地からの解説をいただき,市民が放射線リスクについて考える上で,どのように考え方を整理すればよいか,放医研で行われている,放射線についての相談への対応などを交えて講演をされました。

 最後の3題目では,毎日新聞社 斗ケ沢先生の講演でした。福島第一原発事故で,失敗したリスクコミュニケーションを科学的側面,行政的側面,マスメディア的側面から分析され,私たちがマスコミ・報道から得る情報をどのように処理していけばよいのかを講義されました。

 総合討論では,会場から,福島から避難されている方,原発関係の方などから終了時間を超過するほどの質問や討論が行われました。避難を余儀なくされた市町村の長はマスコミや科学者とどのようにコミュニケーションをとったらよかったのか,科学者は避難している住民をどのように考えているのかなどなどです。「ゼロリスク思考についてどのように対処すればよいか」という質問に対して神里先生は,一見,ゼロリスクを目指すことは,共感を得やすく反論する余地がないように思える。しかし,ゼロリスク思考は,基本理念であり,有限の時間,資源の中でリスクの低減をやっていくのかを考える基となるものなので,一般的リスク事象との比較対象にはなりえない。たとえば「基本的人権」と同じようなものであり,完全に基本的人権が守られている社会が存在しないのと同じく,基本的人権をベースにより人権が守られる社会を構築していくかを論議する必要があるとされた。また,福島原発でのリスクコミュニケーションの失敗につて多くの参加者から活発な意見がだされ論議は尽きなかった。

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